昨日のブログでご説明した定期賃貸借契約、内容はご理解いただけたでしょうか?
今日は、この定期賃貸借契約の契約書に、貸主からの中途解約ができるという条項が記載されているときに、貸主はこの条項に基づいて契約を中途解約できるのか、という問題について説明したいと思います。
なぜこのようなことを書くかというと、私が業務で定期賃貸借契約の契約書をチェックしている場合、よくこのような「貸主からの中途解約可」という条項が含まれた契約書を目にするからなんです。

契約書に中途解約可能な条項が入っているということは、契約時に貸主のみならず借主も、契約の中途で解約されることを納得、承諾した上で契約を結んでいるのですから、この条項に基づいて、貸主は契約途中で定期賃貸借契約を解約できるように思います。

しかしながら、このような中途解約条項は無効、と考えるのが一般です。理由は、契約の終了期限が不確定なものとなるので、定期賃貸借契約の趣旨からすると無効と考えるべき、とされています(この点について争われた裁判例は見当たりませんでしたが、解釈本(例えば別冊法学セミナー「基本法コンメンタール」第二版補訂版借地借家法p119、Q&A定期借家権p228~p229など)には明記されています。

そうすると、貸主は、中途解約条項を入れた上で借主と定期建物賃貸借契約を結んだとしても、契約途中で解約することはできない、ということになります。

この問題は、物件の所有者である貸主から物件を購入した新オーナーの場合、深刻な影響をもたらす場合があります。

一般に、賃貸借契約がついた物件(店子さんがいる物件)を所有者から購入した新オーナーは、旧所有者が借主と結んだ賃貸借契約の条件(例えば家賃の金額、契約終了時期、その他)をそっくりそのまま引き継ぎます。

そうすると、新オーナーは、さきほどの中途解約条項が付いていることを知って店子つきの物件を購入することになります。

例えば、元の所有者(Aさんとします)と借主(Bさん、例えば牛丼屋さんとします)との間で、家賃月額100万円、10年の定期建物賃貸借契約が結ばれた建物を、5年目終了時に1億5000万円で購入した新オーナーさん(Cさんとします)は、しばらくは月100万円、年間1200万円の家賃収入をもらっていましたが、7年目に、その物件を、牛丼屋さんBに立ち退いてもらった上で1億8000円で購入してもよい、という方(Dさん)が現れたとします。

Cさんは、1億5000万円で購入した物件を1億8000万円で売却できるのだからと、喜びいさんでさっそくDさんと売買契約を結びました。
そして、契約を結んだ後、借主のBさんに、当初の契約の中途解約条項に基づいて、立ち退きを求めました。
ところが、そのBさんは、弁護士に相談した結果、そのような中途解約条項は無効であるとして、立ち退きを拒否しました。
また、もし立ち退きを求めるのであれば、牛丼屋Bさんは年間約2000万円の営業キャッシュフロー(要は稼いだ現金のことです)を生み出しているので、10年の定期賃貸借契約を7年満了時に退去するのであれば、残り3年で約6000万円稼げたはずだから、6000万円の立退料をもらえば立ち退きに応じる、と言ってきました。

Cさんはここで困った立場におかれてしまいました。6000万円の立退料を支払ってしまうと、収支は①もともとの建物の購入金額-1億5000万円、②6年目7年目の賃料合計+2400万円、③今回の売却金額+1億円8000万円、④立退料-6000万円、なので、合計すると600万円の赤字になってしまいます。

これに対し、立退料を支払わず、牛丼屋Bさんを退去できないとすると、CさんはDさんと結んだ、牛丼屋Bさんを立ち退かせた建物を引き渡す、という契約が実現できないとして、Dさんから違約金(売買代金の20%、3600万円とします)を請求されてしまします。
この場合のCさんの収支は、①もともとの建物の購入金額-1億5000万円、②6年目7年目の賃料合計+2400万円、③違約金-3600万円、④ただし、建物は依然としてCさんのもので、建物の価値を購入金額と同じ1億5000万円と考えたとしても、収支は1200万円の赤字となってしまいます。

このように、定期賃貸借契約書に中途解約条項が入っているからといって、無条件で中途解約することはできないので、さきほどの例のCさんは、建物を購入する際に弁護士に相談して、中途解約できない物件であることを認識した上で購入すればよかったのですね。そうすると、弁護士に対する相談費用(私なら5000円~10000円程度、顧問契約をしていただいていれば無料です)の出費のみで、後の大赤字は回避することができたのです。

以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!
みずほ法律事務所