私は仕事柄、離婚に関する相談をよく受けるのですが、その際、相談者から時々出てくる質問が、「妻が勝手に家を飛び出して、現在長期間別居中である。ところが、私が仕事で留守中に、妻が自宅に無断で立ち入り、妻名義の預金通帳を持ち出したようだ。妻のこのような行為は犯罪になるのでは?」というものです。

 まず、長期別居中の妻が、勝手に相談者の自宅に入る行為は、住居侵入罪(刑法130条)という犯罪が成立します。
 この点、もともと一緒に暮らしていた家なのに、なぜ勝手に入ると犯罪になるのか、という疑問が生じますよね?
 これを理解するためには、まず、刑法が住居侵入罪を処罰するのはなぜか?言い換えると、住居侵入罪は、いったいどのような利益を守ろうとしているのか、を考えなければなりません。

 刑法の住居侵入罪がどのような利益を守ろうとしているのかについては、大別して2つの考え方があります。
 まず、①住居権説(新住居権説を含む)という考え方があります。この考えは、そこに住んでいる人が、誰を家に入れるか決める権利を持っているので、その権利を侵害するから、勝手に自宅に侵入する行為は違法だという考え方です。
 この住居権説からは、誰を家に入れるかは、家に住んでいる人間に決める権利があると考えるので、長期別居中の夫婦の場合、事前に承諾を得ていない限り、住居侵入罪が成立することになります。

 また、②住居の平穏説という考え方もあります。この考えは、住居の平穏な状態を侵害するから勝手に住居に侵入する行為は違法だという説です。
 この住居の平穏説からは、長期別居相手が勝手に家に入る行為は、住居の平穏な状態を害する行為と考えられるので、住居侵入罪が成立することになります。

 次に、長期別居中の妻が、妻自身の預金通帳を持ち出した行為はどうでしょう?この預金通帳は、妻自身の持ち物(所有物)なので、窃盗罪が成立しないかのように思えます。
 しかし、刑法242条には、「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。」と規定されています。
 つまり、たとえ自分の所有物であっても、他人が占有する物を勝手に持ち帰ったりすると、窃盗罪が成立するのです。

 だだ、直系血族・配偶者および同居の親族間で行われた窃盗は、たとえ犯罪が成立しても、刑が免除されるという刑法の規定があります(刑法244条)。
 よって、この場合、無断で自分の通帳を持ち出した妻の行為は、窃盗罪が成立するけれども、結局刑は免除されることになります。

 なお、別居中、離婚をするか、婚姻を継続するかを決めかね、悩んでおられる相談者もよくおられます。このとき、私は裁判所の調停手続を利用するよう勧めます。
 一般に、調停というと、離婚調停として、離婚に向けた話会いしか行われないかのように思われている方が多いですが、夫婦が円満な関係でなくなった場合には,円満な夫婦関係を回復するための話合いをする場としても、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
 調停手続では、当事者双方から事情を聞き,夫婦関係が円満でなくなった原因はどこにあるのか、その原因を各当事者がどのように努力して正すようにすれば夫婦関係が改善していくか等、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をする形で進められます。
 なお,この調停手続は離婚した方がよいかどうか迷っている場合にも,利用することができます(以上、裁判所HPより引用)。

 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!
みずほ法律事務所